10時の羽田行きは丁度いいくらいの搭乗率。
というのも、満席だと窮屈だし、あまりにガラガラだとこれから先減便になったりしたら、困るし、という相反する願いを満たしたくらい。3列席の真ん中が空いているのがビジネスにとってはありがたい。家族旅行の方、団体旅行の方もいるので、そういった場合は3列席は3人ですが。
12時半から東京大学で開かれた、ICT2016カンファランスに出席。TEDやハーバード流などで見かけるような席と発表者が近いレイアウトの階段教室。ワイヤレスマイクでの発表なのでTEDみたいです。そして、教室には掛け時計がありません。思う存分話し合うためです。なので、園での時計は大人の都合だから、置きたくないのが私の願いです。いつか、時計のない園にしたい。
東大の赤門は前田藩のお屋敷後だとか聞いたことがありますが、やけに近所に眼鏡屋さんが多い。また、赤門の前で”自撮り”する正装した高齢者(多分、卒業生か)がいらしたりして、独特の雰囲気です。
東京大学情報学環の山内教授による「いきる力を育む21世紀型の幼児教育」と出した基調講演。20年後、つまり和光の黄色組園児が社会に出る頃には、職業の47%が”人工知能”に置き換わっている。私が初めて運転免許を取った時は、免許証の名前や住所は”和文タイプライター”の職人さんたちが将棋盤の大きさの箱から漢字を一つ一つ拾い上げて用紙に打ち込んでいました。私が学生の頃にアルバイトしていた大学の国際部の事務所にはIBMのタイプライターがあり、それで書類を書いていました。社会人4年目ぐらいで初めてワープロ(WANG社製)が導入され、書き直しができるようになりました。今では、和文タイピストの仕事はとても限定された需要と思います。そんなわけで、人口が減り仕事が機械に置き換わる、ということのほかに、人間でなければ出来ない仕事がどんどん新しく湧き出てきて、結果として機械に任せる仕事は機械に任せる、とうい時代が到来するわけです。身近では、3年前まで和光では園児の写真をロビーに額入りで掲示し、希望の保護者には私がUSBにコピーしていました。今では、Facebookでダウンロード。手間は大幅に削減、自由度と使い勝手は飛躍的に伸びた。絵本の貸し出しも、旧園舎では貸し出しノートに保護者が記入していました。今では、園児がバーコードリーダーで貸借りの管理を自分でやります。社会環境が変わることが予見できるとき、教育の現場で準備すべきことも変化して当然で、それをしなければ化石かバラパゴス。
「21世紀型スキル」は今年度幼保連携型認定こども園へ移行した後の「和光の教育・保育」の目標です。山内教授の考える「21世紀型スキルとは」
まず、思考の方法として
・新しい価値を創造する
・物事の本質を見抜く
・困難な課題を解決する
・不確実な状況で意思決定する
・自律的に学び続ける
次に、仕事の方法として
・母国語と外国語で意思疎通する
・話し言葉書き言葉を使いこなす
・チームを束ねプロジェクトを運営する
更に、仕事の道具として
・情報技術の可能性と課題を知る
・情報機器を使いこなす
・知りたい情報を探し出す
・情報価値を評価する
と定義しています。何歳からタブレットやPCを使っていたか、その使い方に慣れているか、いないかは大した問題ではなく、それで何を見つけ、どんな興奮をして、どんな意欲を湧かせたか、が重要。タプレットの操作に限って言えば、タブレットを日常使っていた幼稚園から来た1年生とそれ以外の幼稚園から来た1年生との”操作”に関するさは、6ヶ月で消えるという実験結果があるとのことでした。
また、世界で暮らすための技能としては
・多様な文化を尊重する
・他者と共生する
・地域社会で役割を果たす
このような環境での我々教育者・保育者の役目は、”人生の土台を作る”、”価値観や態度の醸成”を園児が身につける援助をすること。自分で考え、他者と協力し、道具(ITを含む)人の土台を作ることです。「できた!」「おもしろい!」「(これは)使えるぞ!」という成功体験の場を提供することです。
といった、話を20分でしたのが山内教授。私も人前ではとても早口ですが、今日のセミナーの参加者はみんな早口。頭が先に走っているので、前のめりになる。
この後は、都内で生徒数が減り、廃校寸前だった中高一貫校の復活の話、5園のICT実例発表。これもみんな早口。
途中休憩時間に共催各社の製品デモがありました。小型のロボットが朝の園児受け入れをする時代を感じさせる展示や、ドローンで園内の様子をモニターする実例など興味満載。特に、デジカメやスマホですでに実用化され、何気にみんなが毎日使っている人の顔の認識技術で、園児受け入れロボットが園児や保護者の顔を認識して、登園・降園時間を記録する技術はあと一歩で実用化されるとのことでした。和光のロビーにあるICカードリーダーがいらなくなるわけです。
あっという間のセミナー。終了後は神奈川県に住む愛娘にお土産を届けて、ホテルにチックイン。日頃から疑問に思っていたデジタル機器の保育現場での役割についてスッキリした、そんなとてもとても”濃い”午後でした。「いまの園児の中に将来、起業する子がいると思って、その時に役立つ教育・保育をするんですよ!」が一番心に響いた言葉でした。